五里霧中



エアコンも冷房もない事務所の中は、蒸し風呂のように暑い。


風のある外の方がまだ涼しい。


しかし東は汗一つ流さず、冷え切った視線を僕に向けている。



「お前だって子供じゃないんだ。そろそろちゃんと考え「あ、解凍されたみたいなんで、僕はこれで失礼します」


東の言葉を遮って外へ飛び出す。


生憎、飛び出し注意の看板はない。だから轢かれても僕のせいにしないでください。



背後で苛立つような嘆息が聞こえたけど、気のせいかもしれない。


僕はふと空を見上げて、ボソッと呟く。


「レイ。なんか聞いたことある気がしないでもない……」


空は青く澄み渡っている。


でもそれは秋や冬の空のように天高くってわけではなくて。


なんか、重苦しい。


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