スノードロップ
01.幸多き人
 あたしの名前は宮瀬雪希。
"雪希"って書いて,"ゆき" と読む。
お母さんに聞いた話では,あたしが生まれた日はものすごく寒くて,雪まで降っていたという。
白くくもる吐息すらも凍ってしまいそうなほど―。
そんな中でも元気に産声をあげたあたしは,雪にも負けずに可憐な花を咲かせて人々に希望を与えるスノードロップのようだった,とお母さんが笑いながら言ってたっけ。
だからあたしの名前は雪希になった。
"雪の中の希望"。
そういう意味だ。

そして,ほぼ時を同じくして生まれたのが,戸田幸基。
"幸多き人"の"幸多き"って所をずーっと言っていたら,そのうち"コウキ"って聞こえてくるはずだ。
つまり,幸基の名前には"幸多き人になりますように"という幸基の両親の願いが込められているわけだ。

そして幸基は,まぎれもなく幸せだったんだろう。
17歳という若さで,あたしの前から―皆の前から消えてしまうまで。
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