スノードロップ
 でも,幸基は優しい。
さりげなく,あたしの歩く速さに合わせてくれている。

幸基の長い足での1歩があたしの2歩だって,ちゃんとわかってるんだ。

けど―…今のあたしにとってはその優しさが痛いって,どうすれば気づいてくれるだろう?

「なあ雪希?」

うつむき加減に歩くあたしに,不意に幸基が話しかけてきた。

「なに?」

「もーすぐ…俺らの誕生日だな」

一瞬,憂鬱だったことすら忘れてあたしは思わず吹き出した。

「何よ急に…もーすぐって,まだ1ヶ月も先じゃない!」

その日は11月の始め。
幸基は12月10日生まれで,あたしはその2日後の12日生まれ。

「幸基の"もーすぐ"って,定義が変」

笑いが止まらないままに断言する。

「ん…でも1ヶ月っていってもなあ…俺にとっちゃ間に合うか心配なんだよなー」

間に合う?

「え?何が?」

よくわからない幸基の発言に,笑うのをやめてきょとんとして尋ねた。

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