スノードロップ
 「雪希…ごめん。でも何で…」

ごめんね―…。

でも,もうあたしに触れないで。
幸基のあったかさを,忘れさせて?

「幸基。あたしが幼なじみで…本当にごめんね…。もう,終わりにするから」

幸基への想いを,終わりにするから。

「何言って…」

普段は余裕たっぷりの幸基が,本気で戸惑っていた。

あたしにはわかる。

ずっと一緒だった,あたしのたった1人の幼なじみだから。

「ばいばい!」

絶好のタイミングで,ちょうどここでお別れ。
島津くんちに行くなら幸基はここで右に曲がるし,あたしはそのまま,まっすぐ進む。

あたしは足早に,幸基の顔を見ないよう歩き出した。

「おい!雪希!」

うしろから幸基の声が追いかけてきたけど,絶対に振り返るまいと意地を張った。

振り返ったら―…幸基を諦める決意が揺らぐに違いなかったから。

つまらない意地なんて張らずに振り返って,幸基の最後の姿を目に焼き付けておけばよかった。

やけどしたっていい。

焼き付けておけば,よかった。

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