スノードロップ
08.葬式
 全部全部,悪い夢としか思えない。

というより,悪い夢であってほしかった。

朝になって目を覚まして幸基に言うんだ。
「昨日の夢,幸基のお葬式だったの」
って。
幸基はきっと,
「そんな縁起悪いこと言うな」
って怒るだろう。

でも―それこそ夢の話だっていうのは,心のどこかでちゃんとわかってた。

幸基の棺を囲んで号泣するクラスメートたちを,虚ろな目に映す。
男も女も関係なく,みんな溢れ出す感情のままに涙を流していた。

景色が,モノクロだ。

初めて知った。
幸基がいたから,あたしの世界に色があったってことを。

あの電話から4日後。
幸基の葬式が,悲しみの中で行われていた。

あたしは1人,誰とも悲しみを共有せずに幸基の遺影を見つめる。

写真の幸基は,あんなにも…あんなにも,笑っているのに。

幸基―
空気読んでよ。
今笑ってるの,あんただけだよ?

心の中で話しかけるけど,幸基はその笑顔を崩すことはなかった。

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