スノードロップ
02.放課後
 「雪希ー!」

あたしを呼ぶ声。
振り返らなくてもわかる。幸基だ。

秋も更けてきたその日,あたしは担任の先生と面談を終えたところだった。
人気のない放課後の廊下を,教室に向かって足音を響かせながら歩く。

「ったく,無視かよ…」

幸基がそう言いながらもすぐにあたしに追いついた。

「違うって。幸基ならすぐ追いつくかなあって思ったの」

幸基がははっと笑った。
その笑い声になんだかつられて,ふと幸基を見上げる。

視線が,ぶつかった。

いつのまに幸基は,こんなにかっこよくなったんだろう?
そんなことを思った。
女子にしては背の高いあたしと比べても,頭1つ分は身長差がある。
全体的にすらってしてて,整った顔だちに,誰からも好かれる性格。更に憎らしいことに,勉強も人並み以上にはできる奴。

あたしから見て,幸基は完璧だった。

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