スノードロップ
 「雪希っ!次,雪希の番だよ」

隣に立つ親友の薫にこづかれて,あたしは物思いにふけっていたことに気がついた。

おじさんと早苗ちゃんは,わざわざクラスメートのための時間を作ってくれていた。

ひとりひとりが幸基の棺に菊の花をおさめて,思い思いに伝えたいことを告げる時間。

薫はたった今幸基のところから戻ってきたようで,その頬には大粒の涙が光っていた。

「あ…うん」

魂の抜けたような情けない声で返事をして,ゆっくりと前に進み出る。

手が震えて,菊を握りつぶしてしまいそうだ。

一歩一歩が,たまらなくきつい。

< 20 / 23 >

この作品をシェア

pagetop