スノードロップ
 「ならいーけど?」

ため息をつきながらそう言う幸基は,まだ附に落ちてないみたい。

「マフラー貸してみ」

幸基が窓枠から降りて,あたしのすぐ後ろに来た気配がした。
どきんとしたけど,平然とマフラーを渡す。

「もし悩みあるなら…ちゃんと言えよ?友達とか親に言えなくてもさ…俺がいるし,うちの父さんと母さんも雪希のことは本当の娘みたいに思ってんだからさ」

そう言いながら,優しくマフラーを巻いてくれた。

「ありがと。でも,平気」

にっこり笑ってみせたら,幸基もふっと笑ってくれた。

その笑顔に,きゅんってした。
でも,その"きゅん"には少し…切なさも混じってた。

あたしは思う。
もしもあたしが,抑えきれない幸基への想いを告げたら,きっと幸基は―…もうこんな笑顔見せてくれないだろうなって。

幸基にとってあたしはただの幼なじみ。

家が隣同士だし誕生日も近いし生まれた病院も同じだしってことで家族ぐるみで仲良くしてるけど―幼なじみの壁は,高くて厚い。

あたしには,超えられない。
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