ありがとうさえ、下手だった
返り血が自分に付かない位置、刺されて最も苦しい部分、息絶えるまでに時間はかかるけれど絶対に助からない急所。
そのすべてが手に取るようにわかる。
それは言葉では説明することのできない、感覚的なものだった。
「あ…う…、うあぁ…」
喉元を突き刺されて苦しそうに女が呼吸を繰り返す。
吸い込もうとした空気が傷口から漏れて、ほとんど酸素は入ってこない。
「な…んで…」
何もかもわけがわからないという表情で、そいつは息絶えた。
きっと、自分がこれほど恨まれていたなんて考えもしなかったのだろう。
俺は冷めた目でその死体を見下ろし、依頼人の方を振り返る。
「終わったぞ」
「あ…」
彼女は両手で頭を抱え込むようにしてしゃがみ込む。
今さら後悔したって遅い。
すべては後の祭りだ。
俺は殺せと言われ、報酬をもらったから言われた通り殺した。
そして彼女は俺が相手を殺す瞬間を見ていきたいと言った。
それだけだ。