ありがとうさえ、下手だった
「聞いてよ、新しい服に返り血が付いた」
眉をハの字にしてスカートの裾を引っ張ると、確かにそこには赤黒い染みができていた。
彼女にしては珍しい失敗だった。
「…どうした、お前らしくもない」
長い睫毛、猫のように大きな目に高い鼻。
まるで人形のような顔をしている彼女は、まったく迷いのない動きをする。
急所を外すことなく一発で仕留めてしまう。
その正確さは、いつも拳銃に一発しか弾を込めないことからも見てとれる。
「私だって失敗ぐらいするよ、刹那さんほど完璧じゃないし」
そう、俺は人を殺すことに関して完璧だった。
まるで自分のこの手は殺人のためにあるかのようだった。
幼い頃にはすでに、俺の手は血に濡れていた。