ありがとうさえ、下手だった
「夜十も、旭も、傷つけちゃいけないよ」
黙って彼女の話を聞いていると、彼女は耐えきれないかのようにうつむいた。
次々と落ちていく音が、地面で跳ね返って俺を打つ。
「私はよくわからないけど、旭にも誰か大切な人ができたんでしょう?」
「そうらしいな。あいつもターゲットに恋情を持っている。
…俺は、そう解釈した」
ターゲットと聞いた瞬間、彼女が少しだけ眉を寄せた。
だがすぐにさっきの表情を取り戻し、俺を睨むように見つめる。
この組織内で俺にこれだけ反抗できるのは彼女だけだ。
他の者は皆、逆らえば俺に殺されるのではないかと思い、従順なふりをしている。
見かけだけの、空っぽな奴らだった。
旭もその中のひとりだった。
「…ターゲットだとしても、2人は前に進もうとしてる。それをボスのあなたが妨げるのは、よくないと思う」
「一人前に、説教か?」
俺はラビットを横目で睨みつける。
けれども彼女は怯まない。
いい度胸だ、殺し屋はそうでなくては。
だが。