ありがとうさえ、下手だった
より目を細めて、射るように彼女を見やる。
「あれだけ人を殺しておいて、よくそんなことが言えるな」
彼女の肩がみるみるしぼんでいく。
俺と同じく血で手を染めた彼女に、説教をされる筋合いはない。
彼女は何度かぱくぱくと口を開いて閉じるを繰り返した。
これだけ言えば何も言い返さないだろうと思っていた。
「所詮は虚勢だろう」
さらに追い打ちをかけるように言葉で彼女を刺し貫く。
痛そうな顔をする彼女を見て、無意識のうちに心が歓喜の叫びをあげる。
もっと苦しめ、と。
けれども彼女は引き下がらなかった。
俺は彼女がそういう人だということを、知っていたのに。
なぜ彼女を追いつめるようなことを言ってしまったのだろうか。
「刹那さんは、人を殺すことが怖いんでしょう…?」
「――っ」
潤んだ瞳が、まっすぐに俺に向けられる。
それ以上言葉が出てこなくて、息を吸い込むことしかできなかった。