ありがとうさえ、下手だった
両手で口を覆っても、彼女の泣き喚く声は押さえきれなかった。
とめどなく溢れる涙は、乾いても乾ききることはない。
きっと永遠に彼女を苦しめ続けるのだろう。
「あの子が死ぬなら私も死ぬ。人間として死ぬつもりで、殺し屋になった」
でも、思ったの。
声にならない細い声で彼女が叫ぶ。
「短い間でも、生きてたら何か楽しいことがあったかもしれないのに…。
私が、それをつぶした…!あの子の人生を、最悪の形で終わらせた!」
親友を自分で手で殺した罪悪感は、一生彼女の中に深く根を張る気がした。
そして俺は、彼女がじきに命を絶つだろうことも予測していた。
赤の他人を殺すことも耐えられない奴がいるというのに、親友を殺したとあれば彼女はもう生きていくことができないだろう、と。
しかし俺はすぐに、彼女をどれだけみくびっていたか思い知る。
彼女は、死ななかった。
次から次へと人を殺し、罪を重ねていくことで生きていった。
人を殺すことが、彼女を生かしていた。