ありがとうさえ、下手だった
孤独だった。
そして今もそれは変わらない。
変わったことといえば、ここが組織と呼べるほど勢力を広げてきたことぐらいだ。
「俺が、優しかっただと?バカなことを言うな」
あの時を思い出してもわからない。
どこに優しさがあったというのか。
そしてなぜ彼女がそれほどまでにあの時にこだわるのか。
いい加減に現実を見ろと言ってやりたい。
「違う。刹那さんは、本当は優しい。私を組織に入れてくれた、私の話を黙って聞いてくれた。
あの時の刹那さんの行動がどれだけ私を励ましてくれたか、あなたはわかってない」
つらつらと、よくも世迷いごとが言えるものだ。
よく動くその唇を、ナイフでそぎ落としてやろうか。
きっと、いい音がする。
「わかりたくもないな。優しいなど、俺にとっては貶し言葉でしかない」
優しいと言われるのは、罵倒されているも同然だった。
まだ殺し屋になりきれていない未熟者だ、と。