ありがとうさえ、下手だった
ラビットが手中のぬいぐるみをなでながら微笑む。
「でも一発で仕留めたよ」
彼女の持つウサギは、もう白いとは言えなくなっていた。
もとは白かったのだろうが、今は多くの血に染まって赤黒くなってしまっている。
それが、彼女がどれだけの数の殺人を犯してきたのか物語っていた。
「ご苦労」
短い労いの言葉を投げかけると、ラビットは口元に人差し指を当てて艶めかしく笑った。
「帰りにね、夜十を見たよ」
「それがどうした」
夜十とは俺の標的だった少年だ。
奴の家族を殺した際、俺は彼の命だけを奪わなかった。
命を奪うよりも残酷なことを、彼に教えた。
彼の左目は、今も俺の刺し傷が残っている。
殺してくれと懇願され、殺さなかった時の傷だ。
「ターゲットの女の子と一緒にいたよ。なんか、仲よさそうだった」
「…そうか」
落ちこぼれだとは思っていたが、まさかここまでだったとは。