ありがとうさえ、下手だった


彼の目尻に悔し涙が浮かぶ。

「先輩も卒業して、やっと試合に出られそうだったんだ。なのに、こんなのって…」

俺の胸に波が押し寄せる。
黒くドロドロと重い、波が。

「…殺してやりたいか?」

そこで彼が平常心を保っていれば、何事も無く事は済んだだろう。
しかしその時の彼は、正気ではなかった。

冗談であったとしても、言ってしまった。

「ああ。
…死ねば、いいのに」

カチリとスイッチの入る音がした。


もう、戻れないと思った。


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