ありがとうさえ、下手だった
カシャン…
ナイフが虚しい音を立てて床に落ちる。
送られてきた依頼状を手に、俺は地に崩れ落ちる。
「なんで…」
今回のターゲットは、
かつての、俺の友人だった。
俺を完全にこの世界に居座らせた、彼だった。
破り捨てた依頼状は、それでも頭の中から消えてしまったわけではない。
殺すのか、俺は。
かつての友人を殺せるだけの覚悟があるのか。
そして、俺がとった行動は――。
何のことはない。
空想世界のように自分のプライドを捨てるでも、自分の命と引き換えに仲間を守るでもなく、俺は……。
何の意外性もなく、殺したんだ。
俺を見た瞬間、目を細めて微笑んだ彼を。
屈託なく俺に笑いかけてくれた彼を。
殺したんだ。