ありがとうさえ、下手だった


依頼なんて断ればよかったと、そう言う奴もいるのだろう。

しかし、恋より愛より振り切ることが難しい友情を断ち切ることこそが、俺をこの世界の頂点まで押し上げた。


俺は今もトップに君臨し続けている。
だが一方で、孤独だった。

誰も触れてこない。
近寄ろうともしない。

友人を殺してまで得たこの地位に、果たして意味があるのか。

今まで殺した奴の顔は、1人残らず覚えている。
忘れないさ。

そうすることが、苦しみを独りで背負うことが俺なりの償い方だ。


「刹那さん…」

その傷に、触れてくる奴がまだいるなんて思わなかった。

一度突き放せばそれで終わりだと思っていた。


だけどお前は、お前だけは。


「…泣いてるの?」

来て、くれたんだな。
俺のもとへ。


< 41 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop