ありがとうさえ、下手だった
涙混じりの、ひどい声だった。
けれどそれでも彼女が笑うから、もうどうでもよくなってくる。
俺はきっとこれから旭も夜十も見送ることになるのだろう。
彼らは明るい光の中へと旅立っていく。
しかし俺はそうしようとは思わない。
どれだけ歪んでいてもこの仕事が、俺を生かしている。
その事実は変わらない。
これからも俺は暗く冷たい闇の中に居続ける。
けれどもう、孤独ではないだろう。
ここに彼女がいるから、仲間がいるから。
俺は、ここに立つことができるのだ。
だから今もう一度、この言葉を。
ありがとう。
end.