ありがとうさえ、下手だった


鼻でせせら笑うと、ラビットもまたウサギ越しに笑った。
煙草の匂いが2人の間に充満する。

「…ねぇ」

不意に彼女が口を開いた。
返事をせず続きを待つと、彼女はどこか寂しそうに遠くを見つめた。

「夜十、辞めちゃうのかな」

「…さぁな」

それは本人にしかわからない。
けれど俺は心のどこかで確信を持っている。

近いうちに、あいつはここを出ていくだろう。

光の中で生きていくことになるのだろう。


「刹那さん。…私は、辞めないからね」

「何の話だ」

「寂しがらないでいいよ」

寂しがるのはお前の方だろう?
言い返すのも面倒で、俺は彼女に背を向けて依頼状の整理に戻った。



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