ありがとうさえ、下手だった
あいつを殺してくれ。
同じ空気を吸いたくもない。
もう我慢できない。
人々の醜悪な願いがこの紙切れに綴られている。
目を通すたび、自分の中の闇が深まる。
救われることなどないのだ。
たとえ殺したとしても、心が晴れることなどない。
待っているのはより深い罪悪感と背徳感。
逃げたいのに逃げられない、のしかかる重圧。
俺は依頼をし、それを見届けた後で恐怖に耐えきれなくなって自ら命を絶った者を何人も知っている。
それを見ながら少なからず満足感に浸ってしまう俺は、きっと普通ではない。
そもそもこんな仕事に就いていること自体、普通ではないのだ。
一通り自分宛ての書類に目を通し、俺はそれを破り捨てる。
「…バカが」
そう呟き立ち上がる。
破り捨てた書類が、足元で踊る。