ありがとうさえ、下手だった
「仕事?」
ラビットに訊ねられたが、当たり前すぎて答える気にもならない。
外へ一歩踏み出せば、なんて暗い路地裏。
今は昼間のはずなのに、夜の街と変わりない暗さだ。
ため息をつきながら、俺は歩を進める。
依頼者が待つ場所へと向かって。
指定されたのは、人気のないコインパーキングだった。
車で来たわけではないので、バーをくぐりぬけて奥へと進む。
「あなたが殺し屋?」
声をかけてきたのは、小柄な女だった。
毛皮のついたコートにヒールの高いブーツ。
良家の育ちを思わせる格好だった。
「そうだ」
彼女の顔が安堵に緩む。
すべてから解放されると表情が物語っていた。
そんなわけがないのに。