夢見屋

冬の向日葵




あれから、頭痛も治まって気分も良くなった俺は夢見屋を出て家に帰ってきた。

明かりも付いていない、真っ暗な部屋に。


一人暮らしをしている俺を出迎えてくれる人なんて勿論居なくて、バタンと閉まるドアの音がやけに大きく聞こえた。


…なんだか今日は疲れた。
明日は学校行くつもりだし、早く寝るか。


そう思った俺はシャワーを浴びて寝ようとした。
寝ようとしたのに……


「よお、良汰。貰ってるよんっ!」


「何勝手に人のアイス食ってんだ」


司がソファに座り俺のアイスをくわえていた。
しかもマンゴー味……


「まあ、いいじゃん」


「ったく…何しに来たんだよ」


俺は冷蔵庫からアイスを取り出して口に入れる。
ソーダ味だ。


「んー?別に……?」


「帰れ」


「ちょっ…嘘だって。この間、お前用事あるって言ってたじゃん?良汰が莢以外のことで用事なんて珍しいなぁーって……」


「まさかそれだけ?」


「おう!」


満面の笑みで頷く司。
バカだ。
知ってはいたが、こいつバカだ。
何で学校でクールキャラで通せるのか理解出来ない。



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