夢見屋
「あの方は常連さんで、よくいらっしゃるんです」
「よくって……ここってそんな簡単に見つけられるのか?」
「夢見屋は夢を見たい人のところに現れますから……」
「そっか…じゃあ、あの人はたくさん好きなものを無くしたのか…」
でも……それでもここに来るのはそれだけの価値が“夢”にあるからなんだろうな。
「それで、お決まりになりましたか?」
「いや…まだなんだ。もう少し考えてもいいかな?」
「はい。大事なことですから」
「あ、そういえば…お前の名前なんていうんだ?」
えっ?と言って目を丸くする。
「俺何か変なこと言ったっけ?」
「い、いえ。失礼しました。名前を聞かれたのは初めてだったもので」
「あぁ、ごめん。言えないんだったら良いんだ」
「大丈夫ですよ。少し驚いただけなので」
そう言った顔はどこか嬉しそうで、聞いて良かったと安心した。