約束
それでも いいー・・・。
どんな姿になっても俺は彼女を愛しているんだ。
だからー・・・・
「逢わせて、くれッ!!」
力の限りに叫んだ。
彼女ナシでは 生きていけると思えない。
『そうかー・・・・。いいだろう。逢わせてやる。』
そう言って奴が後ろを振り返ると 奴の後ろには彼女がいた。
「ッ!!彩!」
俺は彼女の 名前を呼んだ。
彼女に聞こえるように 大きな声で。
彼女は ゆっくりとこちらを向き始める。
「!彩ッ!!」
弾んだ声を出す俺の期待を神は裏切った。
彼女は人じゃなくなっていた。
目玉は飛び出て 耳と口からは血を流し、足や、手は 腐って皮がほとんどめくれて骨や肉が見えてしまっている。
《本当に愛して、くれる?》
彼女がこちらを見てニッと笑いながら こちらに向かってくる。
「あ・・・・ぁぁ・・・・」
違う。
こんなの彼女じゃない。
彩じゃない。
違う 違う 違う。
お前は彩じゃない。
お前はー・・・
「偽物め!!彩を何処へやった!?」
近くにあった石を手に取り 投げる。
人じゃない生き物に投げる。
コントロールは良く 絶対当たっている。
その後も殴り。蹴り。
体中が 赤に染まっていくー・・・・。
赤い 赤い 赤い。

気がつくと 辺りは真っ赤。
ふと 人じゃないものに目をやる。
人じゃないものの首には 彼女の誕生日にあげたネックレス。
《ありがとうっ!凄く嬉しい!!大事にするね!!!》
笑顔でそう言った彼女の顔が 彩の顔が浮かんでくる。
「ぁ・・・あ嘘だ。俺は悪くな・・・・・・。」
嘘だ。
と言わないと どうにかなりそうだった。
目の前の赤い世界。
でも それは自分がした事で。
この目の前の 彩も俺がした事で。
「ぅ・・・・あ・・・・うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
俺が殺したんだ。
たった一人の恋人を。
俺の目からは大粒の涙が 零れ落ちた。
愛する人を 殺してしまった悲しみで。
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