our kind of love
一時間前?
「明日、11時に来て」
電話口の、彼女の声が蘇る。
あいつ、俺が食い下がらないの分かってて、ああ言ったんだな。
「お兄さん白井さんの彼氏?」
好奇心が見え隠れする表情で、その子は哀れむような眼差しをもくれた。
「あ、いや…」
「一時間前に出てったんなら、多分12時くらいの便じゃない?急げば間に合うかもよ」
彼女がどんな思いで、俺にああ言ったのかは分からない。
だけど俺はやっぱりどうしても彼女に会いたかった。
勝手だと思われても、卑怯だと言われても。
俺は礼を言うと、すぐさま来た道をとって返した。