our kind of love
「最後に、会えて良かった」
彼女は小さなトランクを掴むと、俺を見てにっこり笑った。
「ありがと、先生」
「咲、俺」
再び言い掛けた言葉は、彼女のキスで塞がれた。
ゆっくりと唇を離すと、彼女は俺の目を真っ直ぐ見てきっぱりと言った。
「何も言わないで」
決然とした彼女の表情には、いつかと同じようにもう何も言うなと書いてあった。
「じゃあね、先生。また何年後かに、同窓会で会えたら昔話でもしよ」
そう言った彼女は、もうすっかりいつもの彼女だ。
「…ああ。元気でな」
辛うじて口の端を少しだけ持ち上げて、笑顔、のようなものをつくる。