月夜に舞う桜華
プロローグ
月が綺麗な夜だった。
「……なぁ、どうしてだよ?」
声が、震える。
信じたくなかった。
嘘だと言って欲しかった。
誰よりも信頼していた君だったから。
「どうして?んなもん、強くなりたいからに決まってるだろ」
ハッと鼻で笑う。
「強くなりたいから、裏切ったのか……?」
心が、痛い。
「それだけじゃねえよ。俺は、お前が憎い」
「!」
頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。
彼は、笑う。
「強くて、仲間からも信頼されて、護られて……あんたを尊敬していた俺にはいつしか憎しみが生まれていたんだよ!」
その強さに、仲間思いに、存在そのものを敬い、憎んだ。
「だから……?」
「あぁそうさ!裏切ってやったんだよ!」
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