月夜に舞う桜華
「靴箱に入っていた」
封筒の裏を見ても、差出人の名前はない。とりあえず封を切ってみれば、一枚の紙。
恐る恐る開いて、あたしは、眉を寄せた。
「………汚な…」
本当に汚い字だ。
(誰の字………えっと、)
"今日の放課後、屋上に来い!!"
たったそれだけ、名前もない。
あたしは、それに目を通した後、紙を握りつぶした。
「……何て書いてあった?」
「………悪戯」
名前もないのに屋上に来いなんて悪戯にしか思えない。
「………見せろ」
険しい表情で朔夜は手紙を奪う。
真剣な顔で手紙を伸ばし、中身に目を通した朔夜は、呆れたように息を吐いた。
「朔夜?」
「………悪戯じゃない」
「は?」