月夜に舞う桜華



「靴箱に入っていた」


封筒の裏を見ても、差出人の名前はない。とりあえず封を切ってみれば、一枚の紙。


恐る恐る開いて、あたしは、眉を寄せた。


「………汚な…」


本当に汚い字だ。


(誰の字………えっと、)




"今日の放課後、屋上に来い!!"




たったそれだけ、名前もない。
あたしは、それに目を通した後、紙を握りつぶした。


「……何て書いてあった?」

「………悪戯」


名前もないのに屋上に来いなんて悪戯にしか思えない。


「………見せろ」


険しい表情で朔夜は手紙を奪う。
真剣な顔で手紙を伸ばし、中身に目を通した朔夜は、呆れたように息を吐いた。


「朔夜?」

「………悪戯じゃない」

「は?」


< 103 / 310 >

この作品をシェア

pagetop