月夜に舞う桜華



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ピチョン、ピチョンと水道の蛇口から水が滴り落ちている。それは、流れていくことなく、溜まっていく。


郊外の海辺にある使われていない倉庫。
壁には落書きで埋め尽くされ、入口に大きくマークのようなものが威圧感を持ちながら掲げてある。


「………今、なんつった?」


低い、声が倉庫内に響き渡る。


「下っ端が、女に返り討ちにされた」

「女に?」

「なんでも、そいつらが言うには、和に用があったみたいだ」

「………」


金色に髪を染め上げ、耳には痛いくらいに開けられたピアス穴に下がるピアス。制服と思われる服は制服とは言い難い位に崩れている。


「それで?」

「…………桜姫、て知ってるか?」


和は、目を見開く。


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