月夜に舞う桜華
あいつは、あいつは死んだはず。
いや、殺したはずだ。
ちゃんと確認したし、亡骸も埋めた。
それを知っている人間はいない。
あいつには肉親がいなかったから、警察に届けが出されることはなかったし、他の連中には適当に言い繕えばどうにでもなった。
だから、あり得ないはずなんだ。
「………雷心」
「なんだ?」
しかし、調べないわけにはいかない。
もし、もし、桜姫が生きているならば。
「……その女、探せるか?」
「探すのか?」
「あぁ……」
「分かった」
頷いて携帯を取り出す雷心に、和は髪を掻き乱す。
嫌な汗が背中を伝う。
「――――とりあえず、下の奴らには回すが、なぁ、和」
「………なんだ」
「その桜姫、て一体誰なんだ?」