月夜に舞う桜華
構えたまま、にらみ合い、お互い動かない。
心臓の音がリアルに聞こえる。
ざりっと靴がコンクリートと擦れる音と共に、先に、彰真が動いた。
「らぁっ」
一気に拳を振り上げ間合いを詰めたと思えば振り下ろす。
あたしは、すぐにそれをよけ、彰真の溝尾に狙いを定める。
(この前と、一緒)
このまま溝尾にあたしの拳が入っておしまい。
呆気ない終りだ。
「……………」
「………どーしたよ?」
あたしは、自分の拳を見下ろす。そして、彰真を見る。
彰真はニヤリと笑った。
「同じ手に二度も食らわねえよ」
「…………」
確かに、終わりのはずだった。
しかし、彰真はあたしの拳が届く寸前に身を引いてあたしの手を弾いたのだ。