月夜に舞う桜華



(彰真と喧嘩してたはずなのにどうしてここに……?)


そもそも、彰真と決着はついたのだろうか?ある一定の時間の記憶がすっぽり抜けてしまっているようだ。


小さく唸っていると、ガチャッと部屋のドアが開けられた。
そちらに顔を向け、入ってきた人物に軽く目を見開く。


「朔夜……?」

「………起きたか」


朔夜は、ゆっくりと歩み寄ってきてベッドに腰かける。
ギシッとスプリングが鳴る。


「気分はどうだ」

「………大丈夫」


気遣う視線にあたしは戸惑ってしまう。


「椿」


名前を呼ばれて目だけで応えると、スッと朔夜の手が伸びてきた。
反射的に目を瞑ると、頬に冷たいものが触れた。


「……朔、夜…?」

「いてぇだろ?」


ピリッと痛みが走るが、それを中和するかのように冷たさが広がっていく。


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