月夜に舞う桜華



(―――なんで、)


あたしは、朔夜から目が離せなかった。
なんで、そんなに、自分が傷ついたような表情をするの?


「………あいつも悪気があったわけじゃない」


ゆっくりと離れていく手。
それを何だか寂しく感じた。


「でも、あいつが言った言葉ははったりや思い付きじゃない」


ちゃんとした、情報源から立てた仮説だ。


朔夜の言葉に、頭の中に消えていた時間の記憶が蘇ってきた。


今思えば、あそこまで激昂したのは久しぶりだった。
ベッドのなかで膝を曲げ、膝を抱える。


「………情報は、どこから?」

「……晶だ」


やっぱり、と思った。
晶は、どちらかと言うと喧嘩はあまり得意ではないようだったから。


「どこまで、知ってるのかな……」


自分でも驚くくらい弱々しい声が出た。


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