月夜に舞う桜華



一体、あたしは何がしたかったのだろう。


膝に額を押し付けて、深いため息をつく。


「―――俺は、お前を裏切らない」

「!」


弾かれたように顔をあげると、真剣な表情であたしをまっすぐに見つめる。


「言葉じゃ信じられないなら、証拠として指なりなんなり切ってもいい」


自分を削ることによって誓うと朔夜は言う。
自分を削ってまで裏切りはしないと。


あたしは、ぼんやりと朔夜の言葉を聞いていた。


信じる。


裏切る。


表裏一体な二つ。


(――――休んでもいいんだよ。彼なら、大丈夫――)


頭の中でまたあの声が聞こえた。


ゆっくりと目を閉じる。


「――――皇蘭は、あたしの全てだった」


朔夜を一切見ることなくあたしは続ける。


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