月夜に舞う桜華
雷心は、立ち並ぶ倉庫の中の比較的綺麗な倉庫の前に立った。
僅かに開いていた隙間に手を差し込んで、勢いよく横に引く。
ガララッと音を立てて倉庫のドアが開かれた。
中には何もない。
寂れた鉄骨や棒が転がり、窓ガラスは見事に割られている。
「連れてきたぞ」
雷心が一歩足を踏み入れる。
その後に続いて足を踏み入れ、あたしは中を見渡す。
そして、倉庫内のある一点に目が止まる。
(誰か、いる)
こちらに背中を向けていて顔が誰かは分からない。
背は割りと高い方だ。
黒の学ランが他校の生徒だと証明してくれている。
「おいっ――――和!」
「―――――え?」
ドクン、と心臓が不自然に跳ねた。
今、この男は、何と言った?