月夜に舞う桜華
「迷惑?………ちょっと違う」
直接的には迷惑なんてかけてない。
「?言ってる意味が分からない」
「なぁ、桜姫。なんで俺がお前より強くなることを望んでたか分かる?」
一体何が言いたい?
そんなこと分かりきったこと。
ただ、女のあたしの下にいるのが、勝てないのが悔しかったからに決まっている。
その他の回答なんて皆目検討もつかない。
「違う」
まるで、あたしの心を読んだかのように和は否定する。
「違う?」
「違う」
桜姫に勝てなくて悔しくて、なんて理由じゃない。
もっと、もっと深い理由。
「………何なの」
「桜姫は、」
スッと腕が伸びてきて、冷たいナイフの剣身が頬にピッタリと寄せられる。