月夜に舞う桜華
少しでも動いてしまえば切れてしまう。
だからではないが、あたしは微動だにせずに真っ直ぐ和の目を凝視した。
見つめているのではない、ただ無感情に凝視しているだけ。
「皇蘭を創った頃を覚えてるか?」
和の言葉にあたしは、瞬きを繰り返した。昔の話なんか出してどうするの。
しかし、あたしの頭の中には、皇蘭を創った頃の記憶が甦ってきていた。
「………覚えてる。」
「俺もだ。」
「どっちが総長になるか」
「俺は前に負けたから桜姫がなったよな」
あたしは、別にどっちでも良かった。だが、和があたしになれと言った。自分は一度負けたから器はないと。
「俺は、お前を越えたかった」
越えて、勝って初めて皇蘭を纏めたかった…………最初の頃は。