月夜に舞う桜華
「離せ……!!」
「無理」
「卑怯だぞ……!」
これじゃあ動くこともできない。
首は締まって上手く呼吸をしずらい。
「卑怯、ね……」
フッと和は自嘲する。
「卑怯って今の俺達には誉め言葉だ、桜姫」
新しい皇蘭は、そういう卑怯なことばかりをやってきた。
今更何を言われても何も感じない。
ゆっくりとナイフをちらつかせた和が近づいてくる。
「ふぅ……やっと終わるな」
あたしの前に立った和は、安心したように頬を緩めた。
土や血で汚れた指先があたしの頬に触れる。
「………絶体絶命でも顔色は変わんないのな」
つまんねぇ、と和にあたしは片頬を上げる。
「なに?泣き叫ぶ?」
「それはウザイ」
僅かに眉を寄せる。