月夜に舞う桜華
「チッ」
最早舌打ちと言えないくらいの大きさ。そうとう気が立っているようだ。
「…………いきなり、何だよ……」
呻くような声にあたしはハッと和の方を見る。
青筋を立てて後頭部を押さえている和も、キレている。
「あぁ?てめぇ、椿返せ」
「返せ?」
眉間一杯に皺を寄せ、和は、あたしを見下ろす。
「手錠とか趣味悪い」
「黙れ……雅龍が関わってくんな」
ジャラッと手錠が音を立てる。
「うるせぇよ」
一歩、また一歩と朔夜との距離は縮んでいく。
しかし、向かってくる朔夜の前に雷心が立ちはだかった。
「…………」
「こっからは通せねえな」
「邪魔だ」
ギロリと睨み一つで人を殺せそうな位に怖いのに、雷心はビクともしない。