月夜に舞う桜華



「だから、」


和は、ポケットに手を入れるとまたナイフを取り出す。


「良いこと思い付いたんだ」


にっこりと和はナイフの刀身を出す。そして、自分の指先に突き刺すとそこから紅い血が流れ出す。


「桜姫を殺して―――俺も死ねば、ずっと一緒だよな?」


ゾクリと悪寒が走った。


(あたしを殺して、自分も死ぬ?)


あぁ、どうか嘘だと言ってくれ。
夢だと、和………。


「狂いすぎだ………」

「狂わせたのはお前」


あたしのせいなの?本当に?
あたしが一体何をしたと言うの。
もう何度目の自問自答だろう。


「………桜姫、」

「!」


あたしは目を見開いた。
和の眦から伝うもの。
哀しくて哀しくて流れる涙。


(お前も、苦しかった……?)


あたしと同じように?


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