月夜に舞う桜華



「胸が、痛いんだ」

「和、」

「お願いだ……解放してくれよ」


この痛みから、もう解放してくれ。


(………それが、本心?)


和の願う解放。
一度はあたしを刺したことで解放された。しかし、あたしが生きていたことでまた、縛られてしまった。


それを解放してやれるのは、あたし?


ゆっくりと目を閉じてみる。
脳裏を過って行くのは大切な皇蘭での記憶。
その中にいる和は、純粋な笑顔。
この笑顔があたしは大好きだった。


(―――――朔夜、ごめん)


ゆっくりと目を開けて、あたしは小さく笑う。


ごめん、朔夜。
これはあたしの問題だからちゃんと落とし前つけなきゃね。


「――――和」


二度目だな。


でも、今度は一人じゃない。


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