月夜に舞う桜華



「桜姫、」

「そうだな、和………終わりに、しようか」


全部、終わりにしよう。


それが皆のためにもなる。



丁度あたしの背中は広大な海が広がっている。
海に落ちれば今度こそ生き返ることは不可能だろう。


最初からそれが和の目的だったのだろう。痛め付けて抵抗する力を弱くさせ、言葉巧みにあたしを責める。


いいんだ、もう。
あたしも、疲れてしまった。


「ナイフを」

「桜姫」

「今度こそ"ここ"を狙えよ?」


この至近距離だ。まず狙い間違えることはない。


「その前に、手錠外せ。あたしはもう逃げたりしない」


じゃらじゃら煩い、と言えば案外すんなりと和は言うことを聞いて手錠を外してくれた。
手錠のかけてあった箇所は、赤さを通り越して赤黒くなってしまっている。


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