月夜に舞う桜華
(うわー……)
自分で見ても可哀想な痣を擦る。
「ごめんな……?」
「いいよ。別に」
昔のような柔らかい声にあたしはフッと心安定したように思えた。
視界の隅に銀色の少し血で汚れたナイフが映る。
今からやろうとしていることにあたしは酷く冷静でいる。
「………和」
あたしは、ゆっくりと手を差し出す。
「とりあえず、立とう」
その手を逆に捕まれて、和が先に立ち上がった。
つられて立ち上がろうとしたあたしは、一瞬、息をすることを忘れた。
「…………はっ」
何かが肉に食い込むのとそこから走る激痛。
恐る恐る下を向けば、下腹部に銀色のものが刺さっている。
「……か、ず…」
ゆっくりと見上げればニヤリと歪んだ笑みを見せる和。
「桜姫」
「っ!!」
グッと力を入れられて、銀色のもの――ナイフが深くあたしに突き刺さる。