月夜に舞う桜華



(痛みで、何も考えられない……)


ガクンと地面についていた手の力が抜けるー


ああ、もう駄目だなと思った。


ふらりと体が地面に押し付けられる。


(二回目の死、か……)


フッと小さく笑う。


もう起き上がる力さえ出ない。


(朔夜………)


脳裏を過って行くのは朔夜。最期は朔夜を見て死にたかった、なんて自嘲する。


(和……満足か……?)


お前の望み通りだ。


「ありがとう………俺もすぐに逝く」


(そう……か)


瞼が重い。
耳に波の音が聴こえてこない。



「―――――――椿!!!!」



真っ暗になっていく視界の中、ぼんやりとだが、朔夜の姿が見えた気がした。



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