月夜に舞う桜華



「……?」


ざわめきが大きくなる。
視線を戻した先に見えるのは、奴の体が前屈みになっている姿。
その先は、海。


「桜姫、すぐに、俺も………」


逝く、から………。


「っおい!!」


バッシャーンと俺が叫ぶのと同時に水しぶきがあがる。


「朔夜!!っ」


ざざっと俺達の所に辿り着いた彰真達は、倒れる椿に息を詰まらせる。


「椿……!!」

「っおいっ彰真!」

「っ、」


俺は、一番近くにいた彰真の服を掴んだ。べっとりと彰真の服に血がつく。


「あいつを引き上げろ!」

「は?」

「海に落ちたんだよ!」


まぢかよ、と彰真だけでなく、雷杜も呟く。


俺はギリッと唇を噛み締める。


ふざけんなよ。
椿をこんだけ苦しめといて、てめえも死ぬ気か。


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