月夜に舞う桜華
そんなこと、許さねぇ。
遠くから近づいてくるサイレンの音。
「―――――無理だよ」
「あ!?」
海を見ていた昌が呟いた。
「波が荒れてる」
これじゃ、皇蘭の総長さんは、どこにいるかわかんないよ。
「入ったが最後、俺達も無事じゃすまないかも」
「っくそ!!」
俺は、地面を握りこぶしで叩きつける。
くそっ逃げるのか!!
サイレンが、止まった。
椿を見下ろせば、血の気のない表情で。
微かに上下している胸が、椿が今確かに生きているという証拠だった。
「………椿。」
俺は、椿の頬を撫で、額に自分のそれを押しつける。
なんだろうか。
胸に妙なざわつきを覚えた。