月夜に舞う桜華



―――――――――
―――――――


「………あいつの最期は、」

「うん。もういいよ……」


言わなくても分かる、和は海で死んだ。
あたしと、桜姫と一緒に。


でもあたしは帰ってきたんだ。


椿として。


「………椿、」

「ぅん?」

「抑えなくてもいい」

「え……?」

「涙」


言われて初めてあたしは自分が泣いていることに気付いた。
胸が熱い。


止めどなく流れる涙をあたしは制御できない。


そんなあたしを朔夜は、頭を撫でてくれながら慰めてくれる。


(和、哀しいよ)


あの時、先に逝くって言うのはこういう意味だったんだな。


ごめん。


見送ってくれた時、和、お前はどんな気持ちであたしを見送ったのかな。


< 254 / 310 >

この作品をシェア

pagetop