月夜に舞う桜華
エピローグ
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心地好い風、憎いほど空は晴れ渡っている。雲は一つもない。
「――――椿、ここにいたのか」
「あ、朔夜」
安心したような声にあたしは小さく笑った。
「看護師が探していたぞ」
あたしの隣まで歩いてきた朔夜は呆れ混じりにリハビリの時間だろと言う。
「もうそんな時間?」
「はぁ、何時からいたんだよ」
「さぁ……」
苦笑を返してあたしは目の先に広がる景色を眺める。
小高い丘の上にあるこの病院の屋上からの景色は中々満足できるものだ。
ずっと眺めていたいと思える。
「まだ、全快じゃねぇんだからな」
肩を抱かれてあたしは朔夜の顔を見上げた。
顔には出さないが、心配したのかな。