月夜に舞う桜華
「………そうだね」
「部屋に戻るぞ」
「ん」
肩を寄せられ歩き出した朔夜に合わせてあたしも歩き出す。
元来た道を戻りながら、あたしは、朔夜に聞いてみたいことがあった。
「………ねぇ、朔夜」
「あ?」
「あたし、よく生きていたよね」
ピクリと指先が反応する。
「――――1回死んだ。」
「え……?」
「1回は心臓止まったんだよ」
ギュッと強く抱きしめられる。
間近に聴こえる心臓の音は大きい。
「出血多量、病室に運ばれ処置室で1回心臓が止まったんだ」
慌ただしく医師や看護師が出入りし、煩い警報のような音が鳴り響き、処置室近くにいた俺は生きた心地がしなかった。
「処置室から出てきた医師に言われたのは、死刑宣告のようなものだった」
―――何とか一命はとりとめました。しかし、出血が酷く、何時目が覚めるかは断定出来ません。